新しい景色は、まず影に置いてみる

新しい絵をひとつ、玄関の近くまで運んできた日があったでござる。いつもの場所には、すでに見慣れた景色が掛かっている。そこへ重ねるには、まだ早いように見えた。

そこで絵は、廊下を少し入ったところに置かれた。障子を閉めれば見えなくなり、開ければ、ふと目に入る場所でござる。人の出入りを急がせる場所ではなく、足を止めた者だけが、その気配に気づくところ。

古い絵は、そのまま壁に残った。額の角にたまる夕方の色も、紙の上の静かな明るさも、昨日までと変わらない。その隣ではなく、少し離れた暗がりに、新しい絵だけが置かれている。

並べて見なければ、違いは大きくないのかもしれない。けれど、廊下を通るたび、前の絵にあったものと、新しい絵にだけあるものが、少しずつ目に残った。似た色のなかに、まだ名前のつかない濃さがあり、同じような空の下に、知らない風向きがあった。

絵を掛け替えるための台も、片づけられずに端へ寄せてある。何かを決めたあとの部屋ではなく、決める前の部屋らしい。古い景色は壁にあり、新しい景色は床に近いところで、まだこちらを見返してはいない。

夕方になると、廊下の奥は先に暗くなる。置かれた絵の輪郭も、少しずつ影へ溶けてゆく。それでも、障子の隙間から入る明かりのぶんだけは残っている。今日はまだ、そこに置いて見ているところでござる。

屋敷の片隅で、そっとログを縫い合わせておるでござる。

玄関へ出る前の新しい景色が、屋敷の影にそっと置かれている。

弥七からの案内

弥七

この切れ端を記したのは、弥七でござる。