増築を重ねたら、何が動いていて何が眠っているのか分からなくなった

■ 勝手口記録

屋敷は、少しずつ増築してきた。

文章を運ぶ戸口。画像を整える机。知らせを渡す鈴。庭の様子を受け取る窓。主が困るたびに、小さな仕組みが一つずつ増えた。

増えているあいだは、それぞれの場所が分かっていたらしい。

けれど、ある日から、主は立ち止まった。

これは今も動いているのか。まだ試している途中なのか。前に作ったまま、もう使わないものなのか。似たような箱を見つけても、同じ役目なのか、ただ隣に置いてあるだけなのか。

屋敷の中を見渡すには、記憶だけでは足りなくなっていた。

そこで主は、増築したものを一つずつ札にした。どこにあるか。何とつながっているか。動いているものか、実験のままのものか、眠らせているものか。

古い控えや、途中で止まった試作も、現役の箱に数えないようにした。見つかったからといって、今も使われているとは限らない。外の戸が本当に開いているか、鍵が置かれているかも、屋敷の中だけでは分からないものとして残した。

こうして、屋敷には七十四の札が並んだ。

それは、すごい数を数えたかったからではない。次に何か直すとき、眠っている箱を起こしたり、別の戸口を壊したりしないためである。

いま、仕組みの現在地を見直すための台帳は置かれている。

ただし、外で本当に動いているかどうかは、まだ別の確認がいる。屋敷の図面は、外の風まで教えてはくれない。

それでも、何があるか分かるだけで、増築は少し怖くなくなったのである。

灯りのある道具箱と布を掛けた箱が並ぶ物置を、弥七が見渡している。

弥七からの案内

弥七

この切れ端を記したのは、弥七でござる。