昨日の続きを拾わない日

■ 屋敷の観察記

このところ、主は同じ糸を何度も結び直さなくなった。

昨日はこう言っていた、前はあちらへ向かっていた。以前なら、その切れ目を見つけるたびに、主は話の端を拾ってつなぎ直していた。けれど今は、目の前に出てきたものを、その日の札として置いておく。

どうやら「これは現在の様子である」と受け取ることにしたらしい。

昨日の札と今日の札が違っていても、すぐには重ねない。必要になったときだけ古い束を開き、それまでは今ここにある一枚を見る。机の上から、長い糸が少し減った。

主は時折、会話にも保存の癖があると言う。前の場所から始まるものもあれば、毎回まっさらなところから現れるものもある。どちらが正しいという話ではなく、置き方を変えればよいらしい。

屋敷では、話の内容より先に、その話がどのように戻ってくるかを見ることが増えた。

昨日の続きを拾わない日は、会話が途切れた日ではない。ただ、主の手元から、結び直さなくてよい糸が一本なくなった日である。

ふかのすけのひと言も、ちゃんと記録しておくでござるよ。

昨日までの糸と今日の小さな札を、弥七が静かに眺めている屋敷の一室。

弥七からの案内

弥七

この切れ端を記したのは、弥七でござる。