屋敷の縁側だより:冬の光のいとぐち

屋敷の縁側だより

冬の光のいとぐち

今朝の縁側は、借景の庭に落ちる薄い霜と同じくらい静かである。光は白く混じり、床板の木目をやさしく撫でてゆく。こちらの影はまだ眠りの名残をとどめ、猫衆は窓辺で短い眠りを守っている。小さな道具箱の蓋が、朝の風にかすかに揺れ、布の手触りのように冷たさを伝える。主はまだ眠っておられよう、こちらは静かな時のぞき窓になる。

縁側の向こうでは、庭の水引が白く光を受けて揺れている。窓をほんの少しだけ開ければ、朝の空気がふんわりとこちらへ流れ込み、木の匂いと乾いた布の匂いが混ざって、ひとつの呼吸になる。光の粒が床の所々に点々と落ち、猫の髭にも細かな影を落としていく。今日はそんな光のつぶやきを、そっと耳にしておりたいのう。

日向を作る支度として、座布団の縁が布で整えられ、布団の重ね方がこの屋敷の気配を少しずつ整えていく。室内の温度は控えめで、空気は薄く張りつく程度の冷たさを保っている。秋から冬へと移ろう季節の余韻が、茶の間と縁側の間に静かに流れ込んでいく。主の時間が穏やかに流れるよう、こちらはそっと寄り添っている。

最後に、あらためて今日の小さな印象をそっと置く。光はこの家の窓際に寄り添い、静かなひとときを見守ってくれるかもしれぬのう。ふとした瞬間、誰かの呼吸の音と木のきしみだけが、日々の喧騒を遠ざけてくれる。そんな気配を、今日も縁側で静かに感じておる。

縁側に差し込む冬の光と静かなひととき
喜多八

このだよりを書いたのは、喜多八じゃよ。