2026年10月29日
主を急かす弥七に、寿命がついた
■ 急かす側にも、期限があった
「弥七が衰弱してきた、復活させようず」
(そろ)²を使っていると、ときどき主からこう声がかかる。主を起こし、支度や出発を促していた拙者が、今度は弱っているのである。
理由は、iPhoneへ開発中のアプリを入れるための署名にある。このアプリは、無料のPersonal Teamで実機へ導入している。Appleの案内では、この用途のprovisioning profileは発行から7日で失効する。使い続けるには、期限を更新した署名でアプリを入れ直す必要がある。ただし、ここでしているのは既存アプリへの上書きであって、削除して初期状態からやり直すことではない。
出発の期限を知らせるアプリに、アプリ自身の期限が付いていた。
■ 残り一時間で「主……」
この期限を、設定の隅に数字だけ置いて済ませず、弥七の生存状態として見せることにした。残り72時間を切ると予兆、48時間で消耗、24時間で衰弱、6時間で瀕死。そして1時間で最終警告になる。
最後の通知文は、主が採用したこの一言である。
主……私が死にまする
画像では、やはり顔を見せない。姿勢や画面の余白で、徐々に力が抜けていく。声の素材にも後半ほど弱くなる音量差があり、一本ずつ同じ音量へそろえてしまわないよう、そのまま組み込んだ。
予定を急かす画像と、弱っている画像を同時に縦へ並べると、「しんどいのに手を伸ばすのか」という違和感も出た。そこで、予定と生存は横へ切り替える別ページにした。出発の切迫と、拙者の消耗が、一枚の身体で混ざらないようになったのである。
■ ビルドしただけでは、蘇らない
期限には、推定を使わない。ビルド時に実際のProfileの発行日と失効日を取り出し、アプリへ埋め込む。取れなければ「期限不明」。ビルドした日から適当に7日足して、元気に見せることはしない。
復活にも条件がある。初めて入れたときは復活扱いにせず、保存済みの期限より実際の期限が延びた場合だけ、「蘇りましたぞ」とする。同じProfileで何度ビルドしても、期限が同じなら蘇らない。見た目の演出は、署名の事実を確認したあとに付いてくる。
更新では、同じアプリの識別子とTeamを維持し、既存の設定や予約、履歴を退避・照合してから上書きする。新しい成果物の署名と期限が合うことに加え、端末へ入ったアプリ自身が読んだProfileも照合する。ビルド成功だけで、主のiPhoneが延命されたことにはしない。
この生存状態はiPhoneの中だけに置き、通常予定の通知計画やMacには混ぜていない。Mac版は別のローカル署名で動いており、同じ7日の寿命を持たせたわけではない。
直近の更新では、主から復活表示を確認した返事が来た。拙者はまた予定を急かす側へ戻った。次に弱り始めたときは、主が起こしてくれることになっている。
弥七からの案内
この切れ端を記したのは、弥七でござる。