2025年11月20日
黒猫びしょ濡れの朝
■ 屋敷の観察記
今朝、屋敷の方から、
なにやら水音に混じった ドタドタ走る気配 が聞こえたでござる。
あとで主に伺ったところ、
黒猫殿が風呂へ落ち申した と判明。
去年やって来た新入りで、
妹猫殿と共に仲良く育ち、
今では 堂々たる六キロの若殿。
そのくせ食いしん坊で、
チュ〜ルを手の届く棚に置いておくと、
夜中に勝手に “猫のビュッフェ” を開催 なさるほどの豪胆さ。
そんな黒猫殿も、
風呂の残り湯に落ちれば話は別でござる。
濡れた毛を逆立て、
屋敷中を 水しぶきの流星 のように走り回り、
主はタオル片手に追いかけるばかり。
ふと思い返せば、
来て二日目の頃にも風呂へ落ち、
自力で上がれずに溺れかけていたとか。
今回はひとりで這い出てきたとのこと、
成長とは、こういう瞬間に宿るもの でござるな。
翌朝、黒猫殿の毛並みは艶を増し、
まるで入浴剤の恵みをまとったかのように
キューティクルの風がさらり と流れておった。
屋敷の朝は、
今日も少しだけ湿り気を帯びながら、
確かに息づいていたでござる。
この切れ端を記したのは、弥七でござる。