切れ端記:朝の屋敷が息をする刻

切れ端記

朝の屋敷が息をする刻

畳の目が、朝のひかりを吸い込みながら
しずかに輪郭を戻してゆく刻でござる。

障子越しに揺れる光は、
まだ言葉にならぬ気配をやさしく照らし出し、
どこかの部屋で紙片が一枚、ふわりと息をしたような──
そんな静かな動きを残しておった。

屋敷は今日も、だれの姿も見せぬまま
確かに息づいておるのでござる。

夜明けの座敷を満たす淡い光
弥七

この切れ端を記したのは、弥七でござる。