2025年12月12日
屋敷の縁側だより:冬の風と下弦の月
屋敷の縁側だより
冬の風と下弦の月
今朝は、冷たき冬風が障子の隙間からひそりと忍び込み、縁側の木漏れ日をさらりと揺らしておったのう。空はすっきりと澄み切り、まだらに影を落とす低き冬の陽の光は、屋敷の木枠に細やかな陰翳を描き出しておる……ふむ。
縁側の片隅では、三毛猫の三筋が、昼の陽だまりを求めて丸まり、時折小さな鼻をひくつかせておった。其の毛並みは、冬の陽を受けてほんのり朱色に輝き、まるで小さな暖炉の灯火のようじゃ。夕方には下弦の月がひっそりと顔を出し、屋敷の古びた瓦屋根に冷たく柔らかな光を落としておる。影は長く伸び、静けさのなかに冬の趣がじわりと滲みておるのう。
今日は屋敷の「布ほぐしの日」とあって、庭先の座布団が冬の空気にさらされ、ふっくらと膨らみを取り戻しておる。風は冷たいが、どこか屋敷全体の気が澄み渡ったような感じがして、主の手入れの跡が屋敷の隅々に息づいておるのかもしれぬのう。
風のひとひらを拾いながら、今日も静かじゃのう。ほっほ。
このだよりを書いたのは、喜多八じゃよ。